第1回体験学習 「地球の活動をシミュレーションでとらえる」
日時;2014年8月20日(土)午後2時~4時
見学先;海洋研究開発機構(JAMSTEC)横浜研究所
(授業レポート・要約)
「海と地球のふしぎ」を体験学習
スタートして3年目にはいった「子ども大学かまくら」では、新たな試みとして夏休みを利用しての「体験学習」を実施しました。世界最大級のスーパーコンピュータを使って「海と地球のふしぎ」に挑戦(ちょうせん)しているJAMSTEC横浜研究所を見学したのです。
東北地方太平洋沖地震よって起きた津波のシミュレーションや、海底1000メートルでカップ麺(めん)の発泡スチロール容器(ようき)がどうなるかの実験に、参加した「学生」たち27人は目を輝かせていました。
地球は「海の惑星(わくせい)」
見学先へのバスの中ではDVDを通して、JAMSTECでの取り組みをはじめ、有人潜水調査船「しんかい6500」の仕組みを学びました。その後、JAMSTECに40年つとめ、海底30メートルで長期間、海の中での生活をしたことがあるOBの山田海人先生から深海のおもしろい話を聞きました。そのなかのお話を一部、紹介しましょう。
●「しんかい6500」は、人間3人を乗せて世界で一番深く6500メートルまでもぐることができる調査船でした。6500メートルまで往復するのに5時間かかるので、海底で観察する時間はわずか3時間しかありません。最近、中国が7000メートルまで潜水できる潜水船を開発したため、世界一ではなくなりました。
●世界で一番深い海溝(かいこう)はグアムの近くにあるマリアナ海溝で、深さは10920メートル(プラス・マイナス10メートルの誤差(ごさ)があります)。これまでに10000メートルまで潜水艇で到達(とうたつ)した人は世界で3人います。
●地球全体の陸と海の割合は、陸地が30%、海は70%です。その海の98%は水深200メートル以上の深海で、海の深さは平均すると3800メートルにもなります。
●ということは地球の表面はほとんどが深い海になっていて、その深海に住んでいるのは魚ではなくクラゲです。つまり宇宙全体からみると、地球は「海の惑星(わくせい)」と言ってもいいほどです。
こんなおもしろい話を聞いているうちにバスは横浜研究所に到着しました。
世界最速だったスーパーコンピュータ
JAMSTECでは鎌倉からバスに乗った12人と大船からの15人の2班に分かれて、2人の女性インストラクターに案内してもらい、お話を聞きました。
2002年3月に運用を始めた世界最速のスーパーコンピュータは、それまでの米国にあるコンピュータの5倍も速いスピードで世界を驚かせました。2009年に今のものに切り替わりましたが、2015年3月には3代目の新しいコンピュータに代わります。新しくなる度に、スピードが速くなると同時に、機械の大きさも小さく、省エネになっています。
そのコンピュータが置いてある建物は、横65m×縦50m×高さ17mで、東京ドームの2倍の冷房能力をもち、地震や電磁波からコンピュータを守るためにさまざまな装置が工夫されています。その3世代のコンピュータの設置場所の全体風景を、見学者用の窓から見ることができました。
3・11の大津波もシミュレーションで
JAMSTECでは観測して集めたデータをスーパーコンピュータで解析したり、シミュレーションしたりした結果を、さまざまな動画表示装置を使って見ることができます。3・11の東日本大震災やこれから起きる可能性が高いとされる南海トラフ地震による大津波が日本列島を襲う様子がシミュレーション結果として映し出されました。
「地球情報館」では地球のかたちをした巨大な半球スクリーンに、地球を取り巻く気流や海流の動きが刻々と変化していく様子を宇宙から眺めているように見ることができました。
立体メガネをかけて映像をみる映像室では地球深部探査船「ちきゅう」が、7000メートルも深い穴を海底にあけて、土や岩を採取する仕組みなどを見ることができました。
カップ麺(めん)容器が水圧で縮む
アンケート調査で「一番印象に残った」と回答したのは、深海1000メートルの水圧実験でした。水族館の水槽に使われているメタクリル樹脂でできた直径40センチほどの円筒のなかにカップ麺の容器を入れて水圧をかけていきます。容器はみるみる小さくなっていき、深海1000メートルの圧力になると、発泡スチロールに含まれている空気がつぶれて、容器は三分の一近くまで縮んでしまいました。
「この圧力は小指の先に100キロのおもりがのっかる感じです」という説明にみんな驚いていました。
クイズ正解者2人に圧縮のカップ麺容器
最後に無人探査機「かいこう」などで撮影した「深海生物」の記録映像を見て、体験学習は終了しました。帰りのバスの中では山田先生がクイズを出してくれました。何回かクイズを繰り返しているうち正解を続けた「学生」が10人残りました。最後の問題は「生きたシーラカンスは南アフリカ周辺にしかいない。○か×か」でした。×が正解です。インドネシア海域でも見つかったのです。2人の正解者に圧縮されたカップ麺容器が賞品として渡されました。その後、「学生」たちと山田先生との間でダイオウイカやシーラカンスなどの深海生物について大船に着くまで質疑応答が続き、楽しい体験学習でした。
(文責・横川)