2021年度「子ども大学かまくら」
入学式と第1回授業
7月17日(土)午前10時から鎌倉芸術館小ホール
コロナ禍が勢いを増しているなか、「子ども大学かまくら」は、2021年度の入学式と第1回の授業を7月17日(土)午前10時から鎌倉芸術館小ホールで開催しました。65人の学生が参加しました。手の消毒、体温計測、密接を避けた着席など、コロナ感染を防止する配慮をしました。入学式での「子ども大学かまくら」副理事長、鎌倉市長、鎌倉市教育長の挨拶を次に掲載します。
「夢を持ち続けてほしい」 子ども大学かまくら副理事長 横川和夫
皆さんこんにちは 。入学おめでとうございます。松尾市長、岩岡教育長には、ご来場いただきありがとうございます。心よりお礼 申し上げます。
「子ども大学かまくら」は今から10年前、学校とは一味違った学びの場を皆さんに提供する という目的でスタートしました 。学校とは一味違う大学とはどういうことでしょうか。
皆さんは気付かれたと思いますけれども、学校で言えば校長先生、副校長先生は「子ども大学かまくら」では理事長、副理事長です。ずいぶん年をとってます。理事長は、ちょっとよぼよぼしていますが、現役時代は、ビジネスマンとして世界をまたにかけて活躍した日本の高度経済成長を支えた人です。今日、お話いただく桂先生は、お年を召されていますが、国立遺伝学研究所で何十年もの間、 DNAなど遺伝学を一生懸命、勉強、研究された世界的に権威のある方です。 そういう方が、ここで皆さんにお話しするのですが、学校ではなかなか できません。
社会に出たら何をしたいか
皆さんは今日から大学生です。小学生と大学生の違いは分かりますか。小学生は 基本的なことを学びますが、大学生は卒業すると、社会人になります。ですから社会で自分はどんな仕事をしようとするのか、どんな人生を歩んでいきたいのかを真剣に考えます。ですから、皆さんは、これからいろいろな方々のお話を聞くことによって、自分も社会に出たらどんな仕事をし、どんな人生を歩んでいきたいかを真剣に考えるチャンスがやってくると思います 。
だいぶ昔の話ですけれども札幌の農学校の第1回目の卒業生を前にして、クラーク博士は
「Boys be Ambitious 」(青年よ、大志を抱け)という言葉を残しました。
最近の大学生は、受験勉強とかに一生懸命になりすぎたせいか、だんだん夢をあきらめてしまい、持たないと言われています。
しかし人間であるからには、夢を抱き続けることが必要だと思います。クラーク先生に見習って私は皆さんに「夢を持ち続けて欲しい 。あきらめるな」と訴えたいと思います。
「ものごとの本質を考える力をつける」
鎌倉市長 松尾崇様
皆さんおはようございます。子ども大学かまくらの入学式にあたり、一言ご挨拶します。
昨年はコロナで開催できませんでしたが、子ども大学かまくらの田上理事長はじめスタッフの皆さまには毎年、こうした貴重な機会をつくって頂き、本当にありがとうございます。
皆さんは今日の入学式で、大学生になります。おめでとうございます。
鎌倉は歴史があって、緑も豊かで、よいところがたくさんあります。何よりも鎌倉がすばらしいのは、この鎌倉を築いてきた先代の人たちのすごさです。
子ども大学で先生になっていただく方々も、この鎌倉にゆかりのある先生たちです。そのようなすばらしい先生たちに触れる機会は、大変貴重です。皆さんが今まで 知らなかった、見たこともなかった世界に出会う機会になることを期待しています。
コロナではいろいろと制約があって、「マスクをしなさい」「暑いからマスク外していいよ」とか、判断することが難しいところもあります。しかし、この子ども大学は、ものごとの本質を考える力をつけるための場です。皆さんは、しっかり自分で考えてください。どういうふうに自分を守るか、家族を守るか、そしてこの鎌倉を守っていくかを考えながら共に歩んでいければと思います。最後に、子ども大学かまくらで、皆さんがすばらしい学びを得ますことを心より期待して挨拶とさせていただきます。皆さん頑張ってください。
「なぜを探求する場が子ども大学かまくら」
鎌倉市教育長 岩岡寛人様
皆さん、おはようございます。鎌倉市教育長の岩岡です。鎌倉市の公立小、中学校を回ってますが、私の姿を見たことのある人いますか。うれしい。見たことある人がいてくれてありがとう 。
教育長って、なにをしてる人だかわからないと思うんですが、学校の先生は授業をしていますね。最近、公立小中学校にIPadや大きな電子黒板が入ったぞーと、わかりますね。先生が楽しい授業するための環境を整えるのが教育委員会の仕事で、教育長はそこの社長さんです。
なんで勉強してますか
コロナが猛威を振るっている中、何とかこの会場で開催することにこぎつけられた運営の皆さんに心から敬意を表したいと思います。そして、ここに来てくれた皆さんにも感謝をします。一言、ここで学んでいただくにあたっての心がまえについて、お話できたらと思いました。
皆さん、なんで 勉強してますか。毎日、学習をして、なんで毎日学校に行ってるんでしょうね。なんで「子ども大学かまくら」に応募して、今日ここに来て勉強しようと思ったんでしょう。
人間が行動する時は、「なにをするのか」「どうやってやるのか」「なぜするのか」という三つの段階があると言われています。
例えば社会の勉強をする。先生が配ってくれたプリントを使って勉強する。じゃあ、なんで社会の勉強をするのか。このなぜやるのかは、自分で考えなきゃいけないところですけど、皆さんは意外と考えていないです。大人も考えないですね。
皆さんはダンスなど、いろいろ習い事をしているかもしれません。ダンスをする習い事を通じて練習をする。じゃあ、なんでダンスをしてるんだろうか。 そのなぜというところが実はすごく大事なんですけれども、なかなか考えていませんね。
人生で楽しいことが増える
私の経験をお話すると、学生の時はなにも考えずに学校に行ってました。いい成績を取ることは、なんとなく良いことだろうと思って、一生懸命勉強してました。でも、ある時、国語の先生が「君たち、そんなに物事を知らないで、どうやって人生を楽しむつもりなんだ」と言ったんです。「漫画とゲームだけが楽しいという人生だけで君たちはいいのか」と言われたのをすごく覚えてます。そこから「勉強する意味ってなんだろう」って考えて、「そうか。勉強すると人生で楽しいことが増えるからやってるんだ」という結論に いたりました。
例えば理科のこと、社会のこと、国語のこと、英語のこと、算数のこと、いろんなことが分かってくると、人生で楽しいことが増えます。経済の雑誌を読んでもおもしろいし、歴史小説を読んでもおもしろい。科学技術の本を読んでもおもしろいし、なにをやってもおもしろくなる。皆さんが仕事についた時に、おもしろい仕事につく可能性が高まっていきます。これが私の見つけたなぜのところです。
ロボットが人間の仕事を奪う時代に
これからの時代、なぜやるのか。皆さんがなんで物事に取り組むのかを考えることが、とても大事になってきます。
これからはロボットとか AI とか、 いわゆる賢い機械が、人間がこれまでやってきた仕事をどんどん奪っていきます。車の運転とか、なにか書くとか、いろんなことを ロボットがやってしまう。人間に残る仕事は、なぜやるのかを考える仕事です。
どうやってやるのかは AI やロボットが考えてくれるし実際に手を動かしてくれますけれども、それが何で人間のためになるのか、どうして役に立つのか、どうして人間が豊かになるのかは考えられないんです。それは人間が考えないといけない。
だから皆さんはなぜやるのかをちゃんと考えられる人間になってほしいと、いつも思っています。
なぜを大事に積極的にかかわる
この「子ども大学かまくら」という場は、なぜ、を探求する場だと言われています。たくさんの立派な先生方が来て、ここで話をしてくれると思います。
受け身で聞くのではなく、「これはなんで大事なんだろうか」「どうやって人間の社会を豊かにしているのだろうか」「自分にとってどういう意味があるのだろうか」――そのなぜを大事にして積極的に関わっていただきたい、と思っています。
このなぜを大事にする「子ども大学かまくら」が、今年度、大成功のうちに終わることをお祈りして、私からの祝辞とさせていただきます。 (了)