2019年度(令和元年度) ゼミ学習A

 

 2019年度(令和元年度) ゼミ学習Aのレポート

 テーマ「文章を書くコツを伝授します(3)」

  

講師;横川和夫先生(子ども大学かまくら副理事長・元共同通信論説兼編集委員)

 

◆開催日時:

1回目 7/25(木)  10:0012:00

2回目 7/26(金)  10:0012:00

 3回目 7/29(月)  10:0012:00

 

◆場所:NPOセンター鎌倉の2F会議室

 

◆受講生 学生9人(5年生5人、6年生4人)

 

 

 女子力に圧倒(あっとう)されたゼミ学習講座(こうざ)

 

夏休みに文章表現のゼミ学習を始めて今回で6回目になります。毎回、ユニークな学生たちが参加して、楽しい時間を過ごしてきました。

 

中でも今回は、参加した学生は女子ばかり。それも5年生が中心で、その迫力(はくりょく)圧倒(あっとう)されました。最近、世界経済(けいざい)フォーラムの男女格差報告で、男女平等の順位では日本は153ヶ国中121位、過去最低という結果が出ました。しかし彼女たちが社会参加することになる10年後にはトップに浮上(ふじょう)するかもしれません。

 


 

第1回目  (7月25日)

 

最初は「私」という題です。「だれにも書けないことを、だれにもわかるように書く」という作文のコツを伝えたうえで、この学生たち9人は、どんなことに焦点(しょうてん)を当て、どう料理するのだろう、と考え()いて出した題です。ところが9人は「(むずか)しい」「もっと題を(しぼ)ってほしい」「何を書いたらいいかわからない」と、悲鳴を上げ始めました。

 

「自分のことを考えたら、いろいろな自分があることに気付くんじゃないの」「だれも真似できないものって、みんな持ってるだろう」

 

そんなことを話していると、だんだん、真剣(しんけん)な顔になり、書き始める学生もいます。5行書いて、「先生」と手を上げて私を()び、「ここまで書いたけど、あと、どうしたらいいかわからない」と(うった)える学生もいます。5行を読んで、感じたことを話し、ヒントを出したりして1時間。9人が全員、書き終わり1日目が終了(しゅうりょう)しました。

 

 

 

第2回目 (7月26日)

  

最初の1時間は、「私」という題で書いた9つの作文を、名前を()せてコピーして全員に配り、中から「良い」と思った作文を選び、なぜよかったかの理由を書いてもらいました。どれも甲乙(こうおつ)をつけられないほど良く仕上がっていたので、票は分散するだろうと予想していました。

 

結果は2票集まったのが3点、1票だったのが3点でした。良かった理由を、こう書いた学生もいます。

 

「具体的に書いていて、読みやすくて、内容がよくわかるからだ。文章から、たくさん努力して、がんばったなということがわかった。とてもすごいと思った」。

 

こんな調子で、みんな的確な評価をしていました。

 

5分の休憩(きゅうけい)の後、2回目は「夏休み」という題を出しました。

 

そのとたん「いやだあ」「まだ夏休み始まったばかり。書くことなあい」「難しい」という声が一斉(いっせい)に上がりました。1回目は、私はゆずりませんでしたが、ちょっと弱気になって「(わす)れることができない出来事」を追加しました。それでも「いやだあ」「別なのがいい」との声。また弱気になって「先生」を、さらに追加しました。3つの題から選択(せんたく)するのだから、いいだろうと思いました。 

 

「先生の悪口でもいいですか」「題は自由にしてほしい」「好きなことを書きたい」と、ワイワイ、ガヤガヤ。「それでは『何でも書きたいこと』を追加しよう」と、さらに追加。4つの題になりました。

 

 

 

 第3回目  (7月29日) 

 

2回目と同じように、前半は、前回の作文をコピーして配り、良いと思った作文を1点選んで、理由を書いてもらいました。「夏休み」が3人。「(わす)れられない出来事」が3人。「自由題」が2人。「先生」が1人でした。どの作文も個性的で、料理の仕方が(ちが)っていて、読ませるものばかり。その1点を紹介(しょうかい)して、要約を終わりにします。

 

 

 

 

「忘れられないやさしい子」        小学5年 松下美香

 

 

 私はマンションに住んでいる。朝、学校に行くとき、1羽のカラスが1人の私についてきた。「あれ?」と思ったが、カラスは「なにもしないよ」というかんじで、私を見てくる。ほっとした私に、まだついてくるカラス。そのとき、私はカラスが好きではなかった。けれど、そんなやさしく、かわいいカラスをきらいになれなかった。そう、私はカラスが好きになってしまったのだ。

 

学校の友達のほとんどは、カラスが(きら)いだった。けれど、私の気持ちを分かってくれる友達が1人いた。まだその子は、カラスが苦手だったみたいだけれど、わかってくれるだけでじゅうぶんだった。

 

次の日もまた次の日もカラスはついてくる。私はカラスとしゃべられないことを、今になって気づいた。「すごくせつないな」と思っていると、どんどん日がすぎた。でもある日、そのカラスがいなくなった。森から2羽のカラスの声が聞こえてきた。ああ、君も大人になったんだ。 

(了)  

(文責・横川和夫、写真・島村國治)