2017(平成29)年度 ゼミ学習B

2017(平成29年)年度ゼミ学習B

 テーマ「文章を書くコツを伝授します」

 

指導 横川和夫先生(子ども大学かまくら副理事長、元共同通信論説兼編集委員)

 

開催日時および会場

第1回 7月21日(金)10時~12時 鎌倉NPOセンター

第2回 7月25日(火)     同

第3回 7月28日(金)     同

 

受講生 学生12人(5年生6人、6年生6人)

 

 

 (学習レポート)

 

 1(7月21日)

 

文章を書くための約束事 

 

1回目は、わかりやすく、読みやすい文章を書くために、ぜひ守ってもらいたい約束事があることを説明しました。それは次のようなことです。

 ①字は、きれいに、マス目いっぱいになるぐらい大きく書くこと。(うす)い字で、小さな字で書くと、入学試験のときなどには読んでもらえません。

 ②書き出しと、行を改めるときは、原稿(げんこう)用紙のマス目を1字あけること。

 ③どこまでいっても句読点がないダラダラした文章にはしない。センテンスはできるだけ短く切ると、歯切れのよい文章になります。声を出して読んでみると、どこで「。」や「、」をいれたらよいかがわかります。

④文章を書くときは、51Hの要素を(わす)れないで入れること。5W1Hは、英語ですが、日本語では、いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どうした――となります。この5W1Hの要素が文章のなかにあれば、読む人は、何を書こうとしているかは、理解できるでしょう。

 

 

1回目のテーマは「7月20日」

 

説明のあと、「7月20日」という題で、400字の作文を書いてもらいました。時間は30分~40分です。

書き終わり、10分休けいのあと、11人が書いた作文をコピーして全員に配り、そのなかで1番よかったと思う文章を選んで、その理由を書いてもらいました。

11人が書いた文章は同じ題ですが、それぞれが(ちが)った内容を書いています。

試験と違って文章は、さまざまなことを書くことができる。答えは同じではない。書く人の考え方、見方が大切だとわかってもらえたはずです。

 

テーマとして出した「7月20日」は、ゼミ学習のあった日の1日前で、学校で終業式がありました。参加者11人のうち6人が終業式のことを書きました。しかし焦点(しょうてん)の当て方はさまざまで、お楽しみ会やお別れ会、成績表のあゆみ、校長先生のお話など、同じものはありませんでした。

5人が「よい」と思ったのは渡辺君の作文でした。紹介(しょうかい)してみましょう。

 

  

 

「7月20日」渡辺 (はやと)さん=小学6年生= 

 

7月20日。それは、夏休みに入る前の日だった。

ぼくは、いつものように学校へ行った。友達はほぼ明日が夏休みだから、うれしそうだった。ぼくも、毎年この日を待って楽しみにしていた。しかし、今年だけは違っていた。たしかに夏休みは楽しい。けどやはり、もうすこし学校にいたかった。この一学期をふり返り考えなおすとあっという間に終わってしまった感覚がある。一か月も一週間も一日もすぐ終わり、また次があると考えていたからだとぼくは思う。さらに五年生もすぐ終わったけど六年生の方が早かった。つまり小学校生活最後だから楽しみたい気持ちが多かった。

やはり、やり残したくないという気持ちが多かった。そのためには、今を楽しむことが大切だと思う。来年があると考えるのはもう無理。小学校では、最後の学年なので去年の気持ちは捨てて、最後まで楽しむ、という気持ちで引き続き秋から過ごしていきたい。(了)

 

「講評」夏休みに入る前の日に、こころのなかで感じ、思ったことを、ありのままに書いたすばらしい作文だ。「ぼくは」は、だれが書いたかは、読み手がわかっているので、できるだけ書かないほうが、格調の高い文章になる。「―と思う」も同じで、できるだけ書かないように心がけてほしい。

 

 

この作文を「よい」とした5人は、いずれも5年生です。単なる状況(じょうきょう)説明ではなく、自分の気持ちを表現した点が、心を動かしたようです。2人の推薦(すいせん)理由を紹介します。

 「これからどうしたらいいかが書かれているところが良かった。私は今、五年生なので、未来は同じようなきもちになるかな?と考えながら読むことができた。私も一学期があっというまに終わってしまったなと思うので共感できた」

 「とても読みやすく、くぎられていたり、自分がこれからのことをかいていてよかった。五年生の私はまだそんなことがかんじられないままです。六年生はすごいなと思った。ひきつづきはなしをつづけているところがよかった」

  


 

第2回(7月25日)

  前回書いてもらった「7月20日」の文章を添削(てんさく)したうえ、「講評」を記入した11人の文章を全員にコピーして配布しました。それぞれの文章で、どこが修正されたかを見ることによって、いろいろ気が付くことがあったと思います。

 2回目も1回目と同じように最初の25分で書いてもらい、書いた文章をコピーし、読んで「よい」と思った文章を1つ選んでもらいました。

 2回目のテーマは「いま、夢中になっていること」です。「よい」という人が多かった松村さんの作文を次に紹介します。

 

  

「いま、夢中になっていること」 松村(れん)さん=小学5年生=

 

今、夢中になっている事は、ハリー・ポッターという、全かんで7さつある本です。Ⅰ・K・ローリングというイギリス人が書いた本で、今、とても人気があり、母に勧められて読んでいる本です。

  その本で、私の好きな所は、主人公、ハリー・ポッターの想像している事が、細かく表現されている所です。

  そして、なによりも、ハリー・ポッターの親友の、ロン・ウィズリーとハーマイオニ―・グレンジャー、この3人で、協力して、「けん者の石」を守る所や、謎を解く所が、1人1人の個性がでていて、とてもおもしろいです。ロン・ウィズリーは、自分が得意のチェス・ゲームを2人(ハリーとハーマイオニ―)を通すために戦って勝ちますし、ハーマイオニー・グレンジャーは、ま法の薬の謎を解きます。そしてハリー・ポッターはけん者の石を取ろうとする者と戦います。とてもスリルがあって、自分も冒険しているような気分になってしまい、だんだんと引きこまれてしまいます。

 

(了)

 

 「講評」今回はハリー・ポッターに焦点(しょうてん)をあてました。本のおもしろさのポイントが400字という短い枠(わく)の中で、よく説明できています。改行を(わす)れないように。

 

 

第3回(7月28日)

 1,2回目と同じスタイルで、進行しました。

 今回は、400字の文章は3個か4個の「かたまり」(パラフレイズ)によって出来上がっています。その「かたまり」と「かたまり」の関係を、上手につなげていくと、文章の流れがよくなることを説明しました。3回目の題は「将来(しょうらい)の夢」です。多くの人が「よい」と選んだ岩崎さんの作文を紹介(しょうかい)します。

 

  

「将来の夢」       岩崎 (たまき)さん=小学5年生=

 

しょうらいはムーミン谷に住みたいです。そう思いはじめたのは、最近ですが、ムーミンにきょうみをもったのは3才ぐらいです。

 もともと、両親がムーミンの物語が好きで、DVDや本、置き物などたくさんもっていました。そのえいきょうで、小さいころからムーミンにきょうみがあったのだと思います。なぜムーミン谷に住みたいかというと、車がないので空気がキレイだし、自然ゆたかだからです。最近は車に乗る人が多いので人が多い東京などに行くと空気がきたなくて気持ちよくありません。なので車がないムーミン谷に住みたいです。

 実際本当のムーミン谷はありませんが、ムーミン谷に住みたいという夢は変わりません。でも本を読めば自分がムーミン谷に住んでいる気分になれます。

 大人になったら自分でムーミン谷をつくって住みたいです。(了)

 

「講評」ムーミン谷に住んでみたい―こんなことを考えるのは五年生だからできるのです。しかも空気がキレイで、自然がゆたかだと理由もはっきり書いています。ぜひ実現してください。

 

                    (文責・横川和夫、写真・島村國治)