2016(平成28)年度 体験学習B

 

「鎌倉の歴史的建物を巡る」

指導 東北芸術工科大学教授 志村直愛先生

 

日時 2016年10月15日(土)9:45~12:10

場所 長谷・由比ヶ浜地区の景観重要建物群

 

 

  

 

(学習リポート)

 

 

秋季の体験学習Bのねらいは、景観上重要な建物に指定されている鎌倉の別邸(べってい)洋館を中心に巡(めぐ)り、明治から昭和初期の建築文化の特徴(とくちょう)と鎌倉の近代史を体的に学ぶことでした。残念ながら、申込(もうしこみ)者の中から所属小学校の新たな行事による欠席者がかなり出ることになったため、最終的には6人の学生(4,5,6年生各2人:男子4人、女子2人)の参加となりました。

 

 幸い秋晴れの爽(さわ)やかな天候に恵(めぐ)まれ、街並(まちなみ)を歩きながらの6カ所の歴史的建物をつぎつぎ巡るツアーは、志村直愛先生の指導の下、学生達にとっては楽しいものになりました。

 

 

まちの中で貴重(きちょう)な西洋館や近代和風建築を学べるかまくら

 

江ノ電の由比ヶ浜駅前を出発して、まず、街並の路上で、全体的な観察のポイント(鎌倉に西洋館が多いのはなぜか?それらを鎌倉ではどのように守っているのか?それらの建物の外観、室内、周辺の環境(かんきょう)などの特徴の見方は?)について、そして訪問(ほうもん)する建物一つ一つについての資料の見方・メモの取り方などが説明されました。

 

 

 

 

吉屋信子記念館 ― 和風の中に現代的で自由な工夫が

 

[木造平屋建て、1962年完成](25分間)

 

 

 建築家、吉田五十八(よしだいそや)の設計には、和風建築ですが、現代的で自由な工夫がたくさんあります。具体的には、フラットな瓦(かわら)、床下(ゆかした)の通気、銅葺き(ぶき)の軒(のき)、庭木の選定、北向きの書斎(しょさい)と自然光の活用、ふなぞこ天井(てんじょう)のモダン化、隣接(りんせつ)するリビングと和室の目線を考慮(こうりょ)した高低関係、などに注目しました。

 

 

かまくら文学館 ― 海の見える丘(おか)の上の元前田家の洋館

 

[木+鉄筋(てっきん)コンクリート造3階建て、1936年完成](25分間)

 

 

前田家の別荘(べっそう)として建てられ、ノーベル平和賞を樹種(じゅしゅ)した佐藤栄作元首相が別荘として利用していたこともあります。西洋風建築で建物内外に特徴ある装飾(そうしょく)が多く見られます。誘導(ゆうどう)路のトンネル、海の見える丘の上の唯一(ゆいいつ)の洋館、スペイン瓦、暖炉(だんろ)、ステンドグラスなどに注目しました。1985年からは、現在の文学館になり公開されています。燦(さん)さんと降(ふ)り注ぐ陽の光の下、谷戸の緑を背負(せお)った建物、南に鎌倉の青い海を望む庭園で、全体的な説明がなされました。

 

 

長谷子ども会館 ― 緑青にまもられた古代ギリシャ風の建物

 

[木造2階建て、1908年完成](10分間)

 

 

 福島浪蔵(なみぞう)の邸宅(ていたく)として建てられ、後に諸戸(もろと)清三の別荘だった建物です。明治時代の西洋館らしく、バルコニーが設けられ、古代ギリシャ建築のような造りが見られるのが特徴です。屋根はスレートと緑青(ろくしょう)に覆(おお)われた銅葺きで、緑青が建物保護に役立っていることが説明されました。1974年からは、鎌倉市の市民学習施設(しせつ)として活用されています。

 

 

加賀谷邸 - 典型的な西洋風住宅の伝統を残す

 

[木造2階建て、1925年完成](10分間)

 

 木造下見板張りという外壁(がいへき)が特徴の典型的な西洋風住宅建築で、隣接(りんせつ)する伝統的な和風住宅建築の応接間として造られた建物です。縦長(たてなが)の窓やスレートで葺かれた屋根などの特徴に注目しました。ちょうどその時、ドラマ(?)の舞台(ぶたい)として邸を撮影(さつえい)するスタッフが出入りしている様子がうかがえました。

 

 

 

 

かいひん荘(そう)鎌倉 -和洋の古いガラスが独特の風情をみせる室内

 

[木造2階建て、1924年完成](25分間)

 

 

 元々は富士製紙社長の村田一郎の別邸として関東大震災(しんさい)後に建てられましたが、1952年からこの建物を活かして旅館として使われています。その洋館部は、尖(とが)った屋根、出窓(でまど)などが特徴です。旅館のご厚意で建物内の応接間や洋風客室も見学させていただきました。アールヌーボー風の照明ガラス、出窓の歪(ゆが)んで見える古い板ガラス、霜(しも)のような模様(もよう)の入った板ガラスなどにも注目しました。

 

 

 

すべてのスケジュールを終えて、最寄りの由比ヶ浜駅に戻り1210分頃(ころ)に解散しました。

 

以上 

 

(文責 中村和男; 写真 島村国治)