2016年度(平成28年度) ゼミ学習A 要約レポート
テーマ「ロボット技術を学んでみよう」
科学的原理と技能の基礎、モノつくり(ハード、ソフトということ)、技術者像の体験的理解をめざす
◆講師:NPO法人鎌倉ロボット・ものづくり研究会(KRM)の山本修先生/奥野晃先生/林達郎先生他
◆日時: 第1回 9/11(日) 14:00-16:00 / 第2回 9/17(土) 14:00-16:45
第3回 9/25(日) 10:00-12:00 / 第3回補講 10/1(土) 14:00-16:45
◆場所:NPOセンター鎌倉 2F会議室
◆受講者: 学生15名(4年生=5名、5年生=5名、6年生5名)
(学習リポート)
ゼミ学習A 第1回 サブテーマ「4足歩行ロボットの工作(その1)」
山本修講師の他、ロボット製作実習中の学生指導支援スタッフとしてKRMから3名のメンバーも参画。各学生の机上にテキスト、足歩行ロボット組立キット、工具類を配置。
3回連続のゼミ学習講座をはじめるに当たって
3回の各講座の概要と担当講師の紹介の後、工具(ドライバー等)の説明、作業指示に従った進め方に関する注意がなされた。
配布されたロボット教材の部品を確認する
各自の手さげの中に用意された「4足歩行ロボット工作キット」を取り出し、指示に従いながら足部品、歯車、モーター、電池ボックス、ベースプレート、リモコンボックスなど大きな部品、ネジ、ナット、リペットなどの細かい部品を順次、注意深く確認した。
ロボットの組み立てをはじめる
(a) ベースプレートに足固定部品などを取りつける(ドライブシャフト固定部品も含め、ネジとナットでプレートの指定位置にしっかりと固定)
(b) モーターと電池ボックスを取りつける(ベースプレートの下面に小さなギアー(8枚歯)のついたモーターを仮止め、上面に電池ボックスを固定)
(c) ドライブシャフトとクランクを取りつける(大きなギアをシャフトに通し、ベースプレートのドライブシャフト固定部品で支える。電池ボックスとモーターの配線を接続し電池を入れる。仮止めしたモーター位置を、ギアーがかみあい、モーターによるギアーの回転が伝わるように調節・固定。シャフト両端にクランクを反対向きになるようさしこむ)
<15:05~15:10 5分間の休憩>
(d) 足を取りつける(前後の足とリンク部品を組み合せ、ベースプレートの足固定部品ならびにクランクシャフトに、関節のようにリペットでつなぎあわせる)
動かしてみて、ベースロボットのできあがり
モーター、電池ボックス関連の配線をビニタイでまとめ、電池ボックスについているスイッチを入れてみて、動き方が見本のロボットと違わないか確認する。
ギアーの役目を学んでみた
3つの役目、1)力を伝える、2)スピードを変える、3)回る向きを変える、についてベースロボットを使い確かめてみた。ドライブシャフトの大ギア(24枚歯)を中ギア(16枚歯)に替えてみるとスピードは1.5倍になるが力は2/3になってしまう。またモーターと電池ボック間のコネクタを逆にすると、ロボットも後ろ向きに歩いた。
時間がなくなったので、最後に電池ボックスとモーターの間にリモコンボックスをはさみ、簡単に前/ストップ/後への動作切り替えができるようにした。大きさ・形の違う足部品への取り換え、首ふりの仕組みの追加は、自宅でテキストを見ながら各自で進めることとした。
第3回までに、今回作成したベースロボットの部品を替えたり、新たな部品を見つけたり、飾りをつけたりして、自分の「夢を込めたデザイン」をほどこすためのアイデアを考えてくることとした。
ゼミ学習A 第2回 サブテーマ「コイルの働き」
奥野晃講師の他、コイルモーター製作実習中の学生指導支援スタッフとしてKRMから3名のメンバーも参画。各学生の机上にテキスト、コイルモータ製作用部品、工具類を配置。
コイルに電流を流すと磁力線が生じる
導線に電流を流すと、「右ネジの法則」にしたがって磁力線(磁界)が発生する。導線を円形にすればコイルになり、直流電流を流すと磁石になる。流す電流が変化すると磁力線が変化し、これに磁性体(鉄板等)を近づけると磁性体が振動する。
モーターと発電機の原理を学ぶ
磁石とコイルの相互作用により動力または電力を発生する。フレミングの左手の法則はモーターの原理で、磁石による磁界中で、コイルに電流を流した時の力の発生方向を、右手の法則は発電機の原理で、磁石による磁界中で、コイルを回転させると発生する電流の方向を表している。モーターを電池で回し、その力でもう一つのモーターを動かすと発電機として働き、ランプが点灯することが実験で示された。
その他にもいろいろな電気部品がある
基本的な電気部品には、コイルの他に抵抗器、コンデンサがある。その電気特性の違いを組み合せて、電気回路が作られる。ラジオやTVの受信に必要な同調回路はその例である。
<14:50~15:00 休憩>
コイルにより発生する磁性体の振動を体感する
ラジオからの音声信号をコイルに流すと、磁性体を貼った麺(めん)カップ、新聞紙、段ボール箱が振動して、音声として聴くことができることを体感した。
ロボットの動きを設計するために
ロボットを設計するには、ギアの組合せ、足やリンク、クランク、スライド機構の接続による動作線図、電気部品の組合せによる電気回路が重要となる。その演習も予定されたが、時間の関係で省略された。
コイルとモーター軸受けの作成にいどむ
16時に近づいていたが、コイルとモーター軸受けの自作にいどんだ。主要部品の導線を、親指位の筒状の冶具(じぐ)に十数回巻き付け、たばねて数か所糸でしばり、コイル状にした導線の両端を数cmのばし、その部分をサンドペーパーでみがいておく。軸受け用の2個のクリップの曲げの一部を伸ばし、コイル軸をのせられるようにした。クリップの足を発泡スチロールの台座に刺し、その間にコイルをはさんで導線両端が回転軸となるようにととのえ、スペーサーをへてクリップにかける。コイルの下には強力な磁石を置いた。学生は各部の調整を行いながら、両クリップに電池の+-をつなぎ、コイルに電流を通すことでコイルの回転を確認することができた。
時計はすでに16時半をまわっていた。
ゼミ学習A 第3回 サブテーマ「4足歩行ロボットの工作(その2)」
第1回の講座で製作した「4足歩行ロボット」のベースモデルに、各自で部品を加えたり、装飾(そうしょく)をほどこしてオリジナルロボットに仕上げました。第3回の講座は9月25日(日)開催(かいさい)予定で準備がなされましたが、前日に運動会を予定していた小学校の内、4校で翌日(よくじつ)に雨天順延(じゅんえん)となり、本講座の受講生6名が参加できなくなりました。そこで、それら6名に対しては、この第3回について10月1日(土)に補講(ほこう)を開催し、受講してもらうこととしました。
<9月25日の講座>
参加したのは全学生の2/3の9名で、講師陣(じん)は、山本修講師の他、学生指導支援スタッフとしてKRMのメンバー4名も参画。学生には3名づつのグループで机についてもらい、机上に各自のベースモデルと自宅で用意してきたオリジナル・デザイン用の部品・装飾用品類を置いてもらいました。
10時過ぎ、講師から、作業の進め方、講師から提供(ていきょう)する部品(LED素子、工作用品)、工具などの説明、注意事項(じこう)などがなされた後、各自がそれぞれの作業を開始しました。
工作用品・部品を調達し加工する
会場後方に並(なら)べられた百円ショップ購入(こうにゅう)の工作用品・部品類から、自分がロボット改造や装飾に必要なものを調達したり、プラスチックの球体の穴(あな)あけなど特殊(とくしゅ)な工具を要する難(むずか)しい加工について、講師の先生に依頼(いらい)したりして、作り始めました。工作用紙、粘土(ねんど)、紐(ひも)、テープ、布などの素材、ボーリングピンのミニチュア、ハローウィンや小鳥の人形、玩具(がんぐ)のコインなどが机の上に広げられました。
ねらいをもって作業がすすむ
ハローウィンを牽引(けんいん)する、ボーリングのピンを中からLEDで光らせる、工作用紙を切り抜(ぬ)いて長い足を作る、紙コップで動物の足、頭、尾(お)を作る、ポールの上に小鳥人形を掲(あ)げる、荷台を段ボールで作る、コインを車体の車輪に組み込む、動物の大きな耳が動くようにする、明りのデザインカバーを作る、飾り花を光らせる、・・・。そんな中で悩みも、「足をつけたら真直ぐ歩かない」「配線が絡(から)まって歯車が動かない」「足のリンク機構に指を挟(はさ)まれた」
もう一息で完成
大体の作品の姿(すがた)がそれぞれ見えてきたようです。月や星形の明かりを載(の)せる、色付けした紙粘土でビンを積みやすく、ラクダのような長い足ができてきた、カップの4つ足がうまく動くか、コイン車輪の荷車に飾りを付ける、先端(せんたん)のホークを強化して格闘(かくとう)力をUPする。
一人ひとり作品発表会に臨(のぞ)む
作品製作が終わり11:40頃(ころ)から、一人ひとり自分の作品をもって前へ出て、動作をさせながら「どのような目的で?」「作品の説明」「特に苦労したところは?」について発表してもらいました。当初一人2分の予定で始めましたが、それぞれが熱い思いをもって発表を行ったため予定を10分オーバーするほどでした。最後に受講アンケートを記入してもらい、各自片(かた)づけを済(す)ませて会場を後にしました。
<10月1日の補講>
補講を受けた6名の学生に対し、林達夫講師とKRMの学習指導支援スタッフ4名の講師陣態勢で行われました。実施(じっし)事項は9/25第3回と同様で、各自が持ち寄った第1回に作成した4足歩行ロボットのベースモデルにオリジナル・デザインをほどこしてゆくことでした。以下、9/25の報告の流れを踏(ふ)まえて簡単(かんたん)に報告いたします。今回は、自分で作りたいロボットの名前を意識してきてもらっていました。
今回のロボット作りのキーポイントは
①モーターの回転運動を足の前後往復運動に換(か)えた「クランク」という仕組み:この運動変換(へんかん)を逆向きに使ったのが蒸気(じょうき)機関車や自動車エンジンのピストン往復運動を車輪の回転運動に換える仕組みです。
②バッテリーと直流モーターの間にはさむ「切り替えスイッチ」の仕組み:バッテリーのプラス、マイナスの電極をモーターに繋(つな)げる向きを簡単に切り替えて回転方向を変更できる仕組みです。
オリジナルロボット作りを始める
自分で持ち込んだ工作素材や部品、そして講師側で用意した部品類から選んだモノの机上に広げ、加工に取りかかりました。かわいい子犬、マシンロボット、空想の動物などを目指し、発泡スチロールのカット、工作用紙に図面を描く、紙やプラスチックのコップ加工を始めました。
だんだんと完成イメージが
ベースロボットのボードに動物やマシンロボットの顔、胴(どう)、尾っぽ、そして飾りなどが付けられてゆきます。足部にさらに特徴を持たせた足の成形部品を創(つくり)り込んでゆく者もいます。
さあ最後の仕上げを
足の成形部品をボード付けたり、LEDを組込んだり、頭や胴、足に飾りをつけたり、そして、実際に動作がうまく行くように調整を行い、完成に向けた作り込みが行われました。
各人により3、4分の発表が
15:45頃から発表をしてもらいました。作品につけた名前、作品の特徴(とくちょう)紹介、苦労したところについて述べられ、その動き方を確認しました。かわいらしい子犬やキノコ人形、闘士(とうし)や怪獣(かいじゅう)ロボットなどアニメーションにヒントを得たモノが多かったようです。
以上
(文と写真 中村和男)