「恐竜のおはなし ~発掘から復元まで~」
講師 對比地孝亘(ついひじたかのぶ)先生
東京大学講師
2月27日(日)14時~15時40分
鎌倉生涯学習センターホール
(授業リポート・要約)
私(わたし)は幼稚園(ようちえん)の頃(ころ)から恐竜(きょうりゅう)が好きで、今はその研究を職業(しょくぎょう)としています。ここでは、はじめに恐竜とは何か、そしてその化石の発掘(はっくつ)についてお話しし、つぎに、発掘してきた化石からどんな動物だったかを調べてゆくことについてお話してゆきます。
恐竜とは何か?
「恐竜」は、大昔本当に生きていた動物で化石から知ることができますが、「怪獣(かいじゅう)」は想像(そうぞう)でつくられたものです。「恐竜」研究には、過去(かこ)の生きものの死体や活動の記録(例えば足跡(あしあと))として残された石としての「化石」を見つけ調べることが欠かせません。
地球の46億年の歴史の中で、恐竜が生きていたのは、2億3000万年前から6550万年前で、その間の変化を図で示(しめ)しましたが、恐竜は爬虫類(はちゅうるい)の一部に分類され、2足歩行の恐竜の一部が今の鳥に進化しました。ここに「空を飛ぶプテラノドン」「海の中にいた首長竜(くびながりゅう)」の写真を示しますが、「これらは、恐竜でしょうか、どうでしょう?」。正答は、陸上に生きていた動物ではないので、「恐竜ではない」です。
さまざまな恐竜の写真を見てもらいながら、恐竜の特徴(とくちょう)(例えば、脚(あし)が真直ぐ下に伸(の)びている)や進化の枝(えだ)分かれ系統図(けいとうず)とともに2足/4足歩行、肉食/草食、体重や体長などの違(ちが)いが説明されました。
化石からの復元(ふくげん)は骨(ほね)の役割(やくわり)を知ることから
復元とは化石から「どんな生き物だったか」を知ることです。第一歩は骨の化石から、その骨の役割を推測(すいそく)すること、そしてどんな筋肉(きんにく)、皮が付いていて、外見はどのようなものだったか推定(すいてい)します。例えば、ステゴザウルス(剣竜類・けんりゅうるい)の背中(せなか)に並(なら)んでいる大きな骨の板の役割については、威嚇(いかく)やメスを引き寄(よ)せるためのディスプレイ、同じ仲間であることを見分けるための特別な形、冷却(れいきゃく)/熱取得(しゅとく)の体温調節のための板、などが考えられます。また、パキケファロサウルス(賢頭竜類)の頭の骨の上部をおおっているコブ状(じょう)の厚(あつ)い骨の役割ですが、(レプリカを示しながら)なわばり争いやメスをめぐる争いで用いられる頭突(ずつ)きに耐(た)え、脳をまもれることが、コンピュータによる衝撃(しょうげき)力への強度計算で明らかになっています。トリケラトプスなど角竜では、博物館の骨の傷(きず)を調べると角と角を突き合わせて闘(たたか)っていたこともわかります。
化石の形から目、鼻、筋肉、脳(のう)を調べどんな動物かをとらえる
いくつかの孔(あな)のある恐竜の頭の化石を見てください。目や鼻の位置がどこか、みなさんに聞いてみましょう。(会場の回答を聞いた上で)正解(せいかい)を説明しながら、恐竜の頭の形の推測(すいそく)の仕方を示しました。また化石のすね骨の筋肉のつき方についても、現在(げんざい)の動物の中の近い仲間(ワニ、サンショウウオ、サメなどの分岐図を示しながら)の骨と筋肉のつき方の関係を調べ、その筋肉の位置や大きさ、重さなどを推測してゆきます。そして、最後に脳について取上げておきましょう。脳も化石には残らないのですが、記憶(きおく)をたくわえる大脳(だいのう)、運動の司令塔(しれいとう)の小脳、匂(にお)いを感知する嗅球(きゅうきゅう)などについて、その位置や大きさを、頭の骨の空洞(くうどう)の形を精密(せいみつ)に計ることができれば推測できるのです。それが現在の医療診断(いりょうしんだん)機器のCTスキャナーによってできるようになりました。これにより、鳥のように平衡(へいこう)感覚が発達していて、飛ぶことができたらしいとか、嗅覚(きゅうかく)が発達していて肉食だったのではないかとか、推測できるのです。
将来(しょうらい)、学生のみなさんが恐竜の研究をしたいと思ったら、是非(ぜひ)さまざまな新しい手法を勉強して研究を深めていって欲(ほ)しいと思います。
Q(4年生) 先生は恐竜の中で何の種類が好きですか?
對比地先生 ティラノサウルスの仲間の獣脚類(じゅうきゃくるい)という肉食での二足歩行の恐竜です。
Q(4年生) 恐竜がなぜ、三畳紀(さんじょうき)から白亜紀(はくあき)にいたことか分ったのですか?
對比地先生 恐竜が掘り出された地層の他の生き物を調べる方法とその地層(ちそう)の年代を岩石の原子の放射性同位体を調べて推測する方法があります。
Q(6年生) 恐竜の子孫に鳥がいるとのことですが剣竜類の子孫はいるのですか?
對比地先生 剣竜類は鳥盤類(ちょうばんるい)なのですけれども、子孫は残っていません。また獣脚類恐竜とか肉食類恐竜の仲間の竜盤類もその子孫は残念ながら残っていません。
Q(5年生) 恐竜と恐竜の子孫の他の生き物のはっきりした境目(さかいめ)はありますか?
對比地先生 「恐竜と呼(よ)ぶ生き物」がどのようなものかは人間が決めているのですが、進化は連続していて、切れ目があまりはっきりしてはいません。
Q(4年生) 今までに見つかった一番大きい恐竜は何という名前ですか?
對比地先生 骨がある程度(ていど)見つかっている最大級の恐竜は、アルゼンチノサウルスです。
(文責:中村、写真:仲島・中村)