「最先端の電気自動車づくりにいどむ」
講師 清水浩先生 慶応義塾大学名誉教授
7月26日(土)14時~16時
円覚寺信徒会館
(授業レポート・要約)
私たちにとって自動車とは
「自動車が好きな人は?」「なぜ自動車が好きなのかな?」
清水先生が“学生”達に問いかけた。「速く動けるから」「便利だから」学生から返ってくる。
人間は2足歩行になって、4つ足の動物に比べて早く動くのが不得意になったので、自動車をつくり出したとの説明をされた。続いて、未来の自動車が社会生活の中でどのように使われるかの夢を描いた数枚のスライドを見せて(写真)、学生達に何の絵か答えてもらった。さまざまな答えが次々と返ってきた。
車に乗ったまま可能な未来のショッピング、レストランでの食事、病院での診察待ち、そして学校の授業、遊園地の観覧車、山登りレースなどでたくさんの小さな車が描かれている。そしてこれらの絵の作者が、あのゴッホの血縁者であることも明かされた。
今地球で起こっていること
「紛争、温暖化、貧困」を、今地球で起こっている難しい問題として取り上げ、その根本的原因の一つに世界中で膨大なエネルギーが使われ、人々の間で平等に使えていないことが関わっているという見方を示された。
地球温暖化について学生に問いかけ、エネルギーを作り出すときのCO2排出が原因で、自動車、工場、発電所、ゴミ焼却などが関わっていることを引き出された。
その上で、人類が必要としているエネルギーを、その1万倍以上の量で地球に降り注いでいる太陽光から取り出し、電力、熱、力、光などに使えるようにする太陽電池を広く活用することで、人類の未来は明るいものになると語られた。
これまでの自動車と新発想の電気自動車
これまでの自動車はエンジンを使って石油を燃して回転力を取り出し、変速ギアを介して様々な速度での走行を行うという原理で、150年間変わらずに使われてきた。
最近はようやく電池とモーターでエンジンをアシストするハイブリッド車が普及してエネルギー節約が進んできた。しかし電池、速度制御装置、モーターを主役とする本格的な電気自動車の開発には新発想が必要と考え、30年以上前から取り組んでこられたという。
これにより、自動車のユーザーにエンジン式の車から本格的な電気式の車に乗り換えてもらえることを目指していると話された。
それにより、エネルギー効率がガソリン車9%弱なのに対し、電気自動車35%が実現できるとともに、自動車の価値としての乗り心地、広さ、加速感でも電気自動車がガソリン車より優れ、値段を抑えて普及させることを目指してきたという。
手がけてきた電気自動車:基本構造と性能
自主開発の新発想電気自動車の特徴は、各車輪の中に個別のモーターを組み込むインホールモーター、床下にフラットに配置したリチウムイオン電池、速度コントローラーとしてのインバーターなどであり、電気自動車の基本構造の図を用いて説明された。
その後、これまでに開発されてきた15台の試作車のうち代表的な車を写真や映像によって紹介された。
世界最速の370km/hを出した8輪車のEliicaについて、スポーツカーの名車ポルシェとの加速競争、運転操作の優しさのアピール、最新の4輪独立制御方式のSIM-Celの走りっぷり、米国の消費者協会による急ハンドルやレーン変更などのテストでのガソリン車に対する安定優位性のアピール、完全自動運転による電気自動車の開発状況の紹介などがなされた。
Q 自動運転の車では信号で止まるのはどのように行っているのですか?
清水先生 一つは信号のランプとその色をカメラでとらえて、ブレーキをかける方法、もう一つは、近くの他の車との通信で、交差点でも各車の速度を調節しあって、お互いに止まらないようにする方法もあります。
Q 自動運転の車の研究は何年ぐらいやっていますか?また、何年ごろに実用化されそうですか?
清水先生 私自身の研究室では15年ほどになるが、全世界では30~40年ぐらい研究してきています。今後、日本のメーカーでは日産自動車が2016年に高速道路のみの完全自動運転車の発売を目指しています。
Q タイヤの数とエネルギー消費効率とは関係していますか?
清水先生 タイヤの数と効率とはほとんど関係ありません。初めタイヤを多くし、各タイヤを小さくして広さを確保することを考えていましたが、今は、大型の車でなければ4輪で良いと思っています。
Q CO2をエネルギーにすることはできないのですか?
清水先生 植物では太陽の光を緑の葉っぱで受けて、CO2と水とを合成して、デンプンと酸素をつくっている。デンプンを酸素と反応させて燃やせはエネルギーを取り出せるが、CO2そのものがエネルギーになるのではありません。
(文責・中村)