2024年度 養老学長との特別対話ゼミナール

 

2024年度 子ども大学かまくら養老孟司学長との特別対話ゼミナール

 

テーマ 「ナゾだらけの昆虫の世界」

講師 養老孟司子ども大学学長(子ども大学かまくら学長、東京大学名誉教授)

2024723日(火)午前10時~12時

鶴岡八幡宮直会殿(なおらいでん)

 

 

(授業レポート)

 

養老学長 僕は小2の夏休みに戦争が終わり、海に行ってカニの動きを見たり、あとは虫捕りをしていました。56年生の頃、滑川の水源を探して川をずっと上がって行ったことがあります。川って無くならない。不思議だなと思っていることがいくつもあって、今でも不思議なまんまです。

   

 

小学4年男子 僕はセミの死骸(しがい)が苦手です。先生は?

養老学長 僕は仕事が解剖(かいぼう)学だったから、虫の死骸は苦手ではない。日本の文化は死んでいるか、生きてるかを区別するけど、これは差別です。差別しないでね。

 

小学5年男子 近未来の昆虫(こんちゅう)食を食べたことありますか。

 

養老学長 ここ30年で昆虫は7~9(わり)は減った。地球はどんどん住みにくい星になっています。最近、昆虫食がどうのこうの言ってるけど、食料自給率をここまで下げちゃった国ってないんですよ。大事なことは昆虫を食べる・食べないじゃなくて、自分たちの食べ物をどこから持ってくるか。平和って戦争が無いことだけじゃなく、自分の力でどこまで生きていけるかってことです。

 

小学5年男子 僕はクモがきらいです。お母さんが子どもの時にかまれて恐怖症きょうふしょうになったため。

養老学長 僕も大っ嫌いだよ。別にかまれたわけでもないけれど。あとはザトウムシ。幼稚園(ようちえん)の時にドブの(ふた)を持ちあげたら(うら)に10(ぴき)ぐらいいて、胴体(どうたい)を上下して(おびや)かされ、それ以来ダメですね。

 

小学6年女子 3年の時に飼育したアゲハチョウが幼虫(ようちゅう)の時に、寄生虫に(たまご)を産まれてしまい、寄生バエが出てきました。何で寄生バエは幼虫とかに卵を産むのですか。

養老学長 元々完全変態の虫は、寄生虫からできたっていう面白い考えがあって、僕は未だにこの考えはてられない。何億年も前に毛虫の中にちょうが宿って、食べて育つのは毛虫にやらせて最後の生殖せいしょくのところを蝶がやるっていう風に分業をしたかもわかんないですね。

 

 

小学4年男子 友達がアリを食べたら酸っぱいと言ってたけど、何でアリは酸っぱいんですか。

養老学長 アリは蟻酸(ぎさん)という簡単(かんたん)な酸を作るからかな。でもお(なか)の中に(みつ)をため込んでるツボアリは食べたら甘い。生き物は、全てがそうだと思わないでください。いろいろあるんだ。

 

小学5年男子 どうして昆虫は足が6本ですか。

養老学長 いろんな都合があって6本に落ち着いたんだと思いますよ。人間も4本ですけれど、例外的に歩く足は2本でした。本来何本でもいいはずですよ。

 

 

 

 

 

小学5年女子 なぜ先生はゾウムシを研究しようと思ったのですか。

養老学長 一番研究されてなかったから。あと体がかたくてかんたんにはこわれない、そこも好きなんですよ。かわいいでしょ、つかまえようとするとコロンとして死んだふりしてます。あんまり利口そうな感じがしないからいいんですよ。(了) 

 

(文責=森 牧、写真=島村國治)