2024年度(令和6年度) 第3回授業

  

2024年度「子ども大学かまくら」第3回授業

「あなたの学び方はデジタル派アナログ派」

講師 牧 紀子先生(湘南工科大学情報学部教授、博士(工学))

2024年10月19日(土)午後2時から

鎌倉芸術館集会室

 

 

(授業レポート)

  

 

勉強に一番関係のある(のう)についてお話します。脳は()きっぽく、ずっと同じことをするのが苦手。思い()みが強く、つじつまあわせ、(わす)れることも得意です。その脳の特色を理解すると、効率よく勉強する仕方も分かってきます。

 

 脳をだますのも戦略

脳の側頭葉にある海馬が、新しい情報に直面すると、人間が生きるために必要かどうかを判断して、必要なものは長期記憶(きおく)として大脳皮質に送ります。例えば「アイロンは熱いから(さわ)っちゃダメ」とか。ところが勉強は命に直接には関係しないので長期記憶にならない。そうなると脳をだますしかない。どうするか。勉強した翌日(よくじつ)から1カ月以内に4回くらい同じ情報をインプットして短期間に何度も入れる。そうすると海馬は「何度も『来る』から大事に(ちが)いない」と思って、長期記憶として大脳皮質に送ります。

 

 脳は忘れる傾向けいこうがある

それでも脳は基本的に忘れちゃう傾向がある。その対策(たいさく)として6時間以上()ること。寝ている間に脳は必要なものを取捨(しゅしゃ)選択(せんたく)します。好奇心(こうきしん)とやる気を持つことも大事です。脳の側坐核(そくざかく)に「やる気スイッチ」があります。「作業する」ことで、このスイッチは入るのです。さらにだから友達と勉強したり、勉強したことを人に話したりして感情が動くと、記憶に残りやすくなります。このように脳の特性を活かすことが大事なのですね。

 

記憶に残りにくいデジタル教材

紙の教材とデジタル教材について、最近の研究ではデジタルは「記憶に残りにくい」「考える前に調べちゃう」「内容を理解する能力が下がる」などの問題点があると言われています。脳が「簡単(かんたん)に調べられるなら大事じゃないな」と判断するからかもしれません。紙に「ノートを取る」という作業は、聞く・考える・まとめて書く、を同時にします。しかしデジタル端末(たんまつ)は見ただけで分かった気になる。しかも見るだけ・聞くだけの受け身になりがちです。手書きの方が脳は活性化され、概念(がいねん)の理解がいいと言われています。

 

 

 

スマホは脳のシナプスを()り取る

それでもデジタルのいいところもあるので、意識して使い分けることが大事です。じゃあスマホはどうでしょう?スマホを使っていると脳がリラックスして休んじゃうことが分かってきました。脳はニューロンという神経細胞(さいぼう)でできていて、その細胞をつなぐシナプスは、脳が休んでいるとチョキチョキ刈り取られちゃう。2018年の調査では、勉強しても、たくさん寝ても、スマホ利用時間が長いと成績は悪いということが分かりました。脳はいろいろな特性があるので、これを理解して楽しく負荷を(あた)えて(きた)えましょう。

 

 

               (文責=森 牧、写真=島村 國治)