2024年度「子ども大学かまくら」第2回授業
「幕末明治の若者たちからもらう活力」
講師 高野知宙(ちひろ)先生(作家、現在京都大学文学部2年生)
2024年9月21日(土)午後2時から
鎌倉生涯学習センターホール
(授業レポート)
中学では寝ても覚めても三国志
私がどうして歴史好きになり、小説を書くようになったのか。小学校の頃から歴史が好きで、あだ名も「歴女」。その頃はマンガばかり。友達が受験するから遊べないと、だったら私も受験すると中学受験をした。おかげで頭の使い方が分かるようになり、小説も楽しめるようになりました。中学の頃は寝ても覚めても三国志。私は好きになるとハマリ込むオタク気質で、その後にハマったのが「幕末」。三国志と同じようにみんなキャラが立っている幕末の志士たちにのめりこみました。そして吉田松陰先生と出会い、「至誠にして動かざる者、未だこれ有らざるなり」という言葉を知り、「自分は人や物事に対して本当に誠実であるか」と、深く影響を受けました。幕末の志士は一人ひとりにドラマがあって、信念に向かっての戦いに命を燃やす熱さに惹かれ、これを読み物にしたくて二次創作を書き始めました。
「最優秀賞でもよかったけどね」が悔やしくて
中学2年の時、幕末の志士が戦って散った京都に初めて足を踏み入れました。たまたま入った木屋町の酢屋で、坂本龍馬などの幕末の志士が見上げていた天井の梁が、数々の歴史を見てきたんだと感動し、オリジナルの小説を書きたいと思いました。完成した小説を第一回京都文学賞に応募したところ、優秀賞を受賞。表彰式で選考委員から「最優秀賞でも良かったけどね」と言われて、悔しくて。私、負けず嫌いなんです。じゃあ最優秀賞を取ってやると思ったんです。そして才能があるなら、いい影響を与えられる作家でありたいと思うようになりました。当時、コロナ禍で授業がないため、小説を読みあさり、友人に勧められて太宰治を読み始めたら中毒性の高い文学で、太宰のことしか考えられなくなって。近代文学にものめり込んで、時間ができたので小説を書いて応募しましたが、落選が続きました。
自分の「やりたい気持ち」を大切に
高校に入り、夏目漱石、芥川龍之介などと出会うことで、それまで歴史への愛を伝える手段でしかなかった小説が、「自分にしか書けない文学をやりたいから、自分の好きな歴史を書く」という意識に変わってきました。そして高校二年生の時、「闇に浮かぶ浄土」で第三回京都文学賞に応募、念願の最優秀賞をとることができました。これを大幅に肉付けして「ちとせ」に改題して祥伝社から出版。まだ遠いと思っていた夢をかなえることができました。やりたいことを好きにやらせてくれた親や周囲に感謝しています。
好きなことをやり抜くことは受験でも活きました。大学はやりたいことがないと空しい場ですが、中・高のうちに「やりたいことを自分でやる」ことができていれば難しくありません。自分で考えて決めて、周りからの応援を受けながら、幕末の志士にエネルギーを得て今の自分があると思います。皆さんもためらわずに、自分の「やりたい気持ち」を大切にして、何か見つけたら、くらいついていってください。
Q男子(5年生) 先生は自分の頭の使い方がわかるようになったと言っていましたが、どうしたらそうなれますか。
高野先生 好きなものを見つけ、追っていくと、脳が活性化していきます。
Q男子(4年) 戦国武将ではだれが好きですか。
高野先生 石田三成と大谷吉継です。私のおばあちゃんの家が関ヶ原の近くで
関ヶ原の戦いの豊臣側を刷り込まれて生きてきているので。(了)
(文責=森 牧、写真=島村國治)
注;高野知宙先生の著書「ちとせ」は、2022年、『闇に浮かぶ浄土』で第3回京都文学賞中高生部門最優秀賞を受賞。大幅な加筆を経て『ちとせ』と改題。
「ちとせ」(祥伝社、定価1600+税)