2023年度 子ども大学かまくら第4回授業
「二度とない人生だから、今日一日笑顔でいよう」
講師 横田南嶺先生(臨済宗円覚寺派管長、花園大学総長)
10月28日(土)10時から
円覚寺 大方丈
(授業レポート)
小学3年の頃、人間は死んだらどうなるか疑問に
私は、お寺で生まれ育ったわけではなく平成になってから鎌倉に来て、数年この円覚寺で過ごしております。生まれは和歌山県新宮市で鍛冶屋の家でした。満2歳、一緒に暮らしていた祖父が亡くなり、精霊流しの船に乗って彼方の世界に行くと母に教えられ信じておりました。さらに小学3年の頃、友人が白血病で亡くなり、人間は死んだらどうなるのであろうか?どこへ行くであろうか?ということが大きな疑問になりました。
自分なりに、その答えを見つけるべく、いろんなところをめぐり、10歳の頃座禅をするお寺にたどり着きました。
禅の老師が仏教の真髄を4行の詩に
中学生のとき、松原泰道老師に「膨大な仏教の書物、お経を読むことはとてもできません。仏教の真髄、何を説いているかを色紙一枚に書くことはできないでございましょうか?」とお願いしたら、4行の詩を書いてくれました。
「花が咲いている 精一杯咲いている わたしたちも 精一杯生きよう」
花というのは動けない、縁のあった場所に根を張って、お日様の光の方に枝を伸ばして葉っぱを広げ、精一杯そこで花を咲かせていく、花の生き方に学びなさいとの意味です。
先代の管長・足立大進老師は言われました。
「なぜ、あなたはここにいるのか。生命の根っこを掘れ」
私は両親から生まれ、そのまた両親がいる。生命というものは深い根っこがあるのだ、お互いの生命をご縁と受け止め、いつも笑顔で、おかげさまという気持ちで生きることが大切なのだ。仏教というのは「ありがたいという気持ち」「もったいないという気持ち」「相手のことを思いやる心」で表すことができる、と教えてくださいました。
私たちは「仏の心」を持つ素晴らしい存在
仏教では、お釈迦様という方がいろいろと修行した結果、人間は皆、優しい慈しみ、思いやりの心を持って生まれていると、お悟りを開いたと言われております。大事なことは、私たち本来の心に気がつくこと、気がつくためにもお経を読んで、仏の心はどういうものであるのか、勉強し努力をとおして、自らが「仏の心」すなわち「思いやりの心」を持っている素晴らしい存在なのだ、と気づいてもらえたらとてもうれしく思います。
この頃、微笑めなくなることがありますが、そういうときにこそ、微笑んでみる。どうぞ命を大切に、自分だけでなく他人も大切に。暴力は体を傷つけますが、言葉は心を傷つけてしまうことがある。姿勢を正して適度に運動しながら食事に気をつけて、睡眠もよくとって、健康に気をつけて、今日一日、笑顔で過ごすように努力をしたいと、これが、私が学んできた「禅」の教えでございます。
(文責=菊池みどり、写真=島村國治)