2023年度「子ども大学かまくら」 第2回授業
「災害時のトイレ」 (講義とグループワーク)
講師 長谷川 太郎先生
湘南おおふなクリニック(訪問治療・泌尿器科・女性泌尿器科・内科・機能強化型在宅療養支援診療所)院長、 鎌倉市防災・災害医療アドバイザー
7月8日(土)10時から12時
鎌倉芸術館3階 集会室
(授業レポート)
◆講義
どうして医者を目指したの
子どものころ僕は、小児病院の敷地の中に住んでいました。小児病院には、お父さんやお母さんの腎臓を移植してもらった子どもたちが入院していて、父が移植手術をしていました。腎臓を移植してもらって元気になり、中には患者さん同士が結婚する姿を見て、お医者さんの仕事は大切なんだと思ったのを覚えています。
知らない人たちが一緒に生活する避難所
地震や大雨による土砂崩れなど日本は自然災害が多い国です。災害が起きると、避難所での集団生活が始まります。集まった人たちは仕方なく一緒に生活しなければなりません。気を遣うし、疲れます。熊本地震では、震源地の近くの学校に350人、車の中に350人と700人が避難していました。地震直後は停電で真っ暗、懐中電灯を使っていました。3階建ての校舎の教室には、足腰の弱いお年寄りは1階、赤ちゃんのいる人は3階の教室に集まる傾向になりました。皆、着の身着のまま逃げてきたので、床に敷くものが無く、体育館のカーテンをハサミで切って毛布代わりにしていました。
災害時の一番の問題はトイレ
停電になるとポンプが止まり、水が出てこないためトイレが使えません。さらに熊本では下水処理場のポンプが壊れ下水も流れなくなりました。しかし避難した人は、そのトイレで用を足す人もいるため、ウンチやオシッコがたまって、周囲は汚物であふれ、くさい匂いが廊下や教室まで充満します。あまりにも臭いので、食事に順番を待つ列も、廊下ではなく外になってしまいました。このように避難場所では、トイレ対策が大切なのです。
便利で役立ったポータブルトイレ
その解決方法として最近、注目されているのがポータブルトイレです。自動式で、事前にポリマーを入れ、用を足した後にボタンを押すと、1分半後に排泄物がラップされた状態で出てくる。無臭状態で捨てられる。最初、消防庁や自衛隊で、いまは介護用品として使われています。このトイレを熊本地震の避難所で最初3台、最終的に5台使って役立ちました。
◆グループワーク
講義の後、6人のグループに分かれて、討論
・「避難所でペットをどうするか」というテーマで話し合い
討論は議論百出。例えば「ヘビにもリードをつけたらいい」「アレルギーのある人のためにペットの場所は別にしたほうがよい」「ペットは人のいない図書室がいい」「避難中は読書が少ない娯楽だから図書室にペットは置かないほうがよい」といった具合でした。この後、ポータブルトイレの使い方が実演紹介されました。
◆終わりにあたって
長谷川太郎先生からのメッセージ
いろんな意見が出ました。皆が「これ正しいな」と思っていることは、上から見たり、横から見たり、下からのぞき込んだり、自分が元気なときや弱っているときでは、それぞれ見え方が違います。いろんな正しいと思うことがあることをわかって欲しくて、お話をしました。
(文責・菊池みどり)