2022年度子ども大学かまくら第4回授業
「子どもの本でアフリカとつながろう」
講師 さくま ゆみこ先生 (翻訳家・アフリカ子どもの本プロジェクト代表)
2022年10月16日(日)午前10時~12時
鎌倉芸術館小ホール
(授業レポート・要約)
アフリカに図書館を
プロジェクトを始めたきっかけは「エンザロ村のかまど」という本です。この中に出てくる、日本人女性に「地元の人たちがどんなことに困っているのかを考えて協力しないとダメよ」と言われ、ケニアのエンザロ村に行って村の人たちに話を聞きました。大きな町の学校では皆、教科書を1人1冊ずつ持っています。が、このエンザロ村では先生すら持っていませんでした。だから図書館をつくろうと思い、日本から本を600冊ぐらい持って行き2004年にできたのがドリームライブラリーです。2008年にはシャンダという所にも子ども図書館をつくりました。
アフリカの絵本ってどんなお話?
「いたずら者の野ウサギ」が、アフリカの各地の昔話によく登場してきます。知恵が良く回り、時にはいたずらをしたり、大きい動物をへこましたりと、そんな話が多い。なぜでしょう?体が小さく力が弱いと思われているウサギが、知恵を使って生き延びる、時には大きな動物をだましても生き延びるたくましさにアフリカの人たちは魅力を感じているからです。
むかし話をなぜ集めるの?
むかし話は放っておくと消えてしまうので、アフリカの人たちが、もともとその土地で話されている言葉である母語で話を聞き、それを集めて本にして、記録として残しておこうとなったのです。
なぜ母語ではなく、英語で本を出しているのでしょう。例えばナイジェリアでは250以上の母語を話す人たちがいます。そうすると何語で教育したらいいのか迷います。それでその中でも多くの人が使う公用語である英語で本を出せば、買う人も増えると考えたのです。
「語る・聞く」文化と「書く・読む」文化
アフリカではおばあちゃんが夜、地元の子どもたちを集めてお話をすることが盛んです。西アフリカにはグリオと呼ばれる人たちがいて、歴史や昔話や神話が全部頭の中に入っています。一人のグリオが死ぬと図書館が一つなくなるとも言われています。日本は今、「読む・書く」が主流ですが、アフリカでは「語る・聞く」という文化が大切にされています。「読む・書く」文化の良いところは、書くことで記憶に留めることが出来ます。「語る・聞く」の文化は、しばらく時間をおいて語ると、前とはちょっと違う話になってしまうことがあります。なので両方必要だと思いますね。
(文責=森 牧 写真=島村國治)